子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

大阪府内市町村教委に「<教育出版>道徳教科書は採択しないでください。」要望書を提出

2019-06-09 08:20:31 | 2019年教科書採択
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会では、大阪府内全ての市町村教育委員会に対して、「<教育出版>道徳教科書は採択しないでください。」の要望書を提出しました。

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教育委員会 教育長様
教科書選定委員会様
                    2019年6月8日
     子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会
                    
2020年度使用小学校教科書の採択にあたっての要望書(その2)
<教育出版>道徳教科書は採択しないでください。

 貴教育委員会の日頃の教育へのご尽力に敬意を表します。
 今年度の小学校教科書の採択にあたって、私たちは既に貴教育委員会に要望書と公開質問状を提出させていただきましたが、さらに<教育出版>道徳教科書は採択しないでほしいとの要望書を提出いたします。また、社会科についても若干の意見を書かせていただきましたので、慎重にご検討のうえ、「人権・平和・共生」を最も大切にしている教科書を採択してくださるように、切に要望いたします。

1.<教育出版>道徳教科書の問題点
(1)自国中心主義は他国への排外主義につながる危険性があります。
<教育出版>は2年前の採択の際に市民・識者から厳しい批判を受けた5年「下町ボブスレー」(安倍首相の裏ピース写真を掲載)を削除しましたが、4年「日本人が世界に広めたすごいもの」など過度に「日本人のすごさ」を強調した教材があります。
どこの国にもすごい物はあり、すごい人はいます。ことさら「日本人」だけを強調するのは、子どもたちに一方的な「優越感」を植えつけ、他国をおとしめることにつながりかねず、外国籍の子どもたちにつらい思いをさせることにもなります。

(2)「礼儀」にこだわり、形を押しつけています。
<教育出版>は低学年の子どもにあいさつの仕方や職員室への出入りの仕方などの「礼儀作法」を事細かに教えていますが、なぜそうでなければならないのかと考えさせることもなく、無条件にこれが正しいと教えています。「考える道徳」の必要性が学習指導要領では述べられていますが、まったく真逆の教材です。

(3)男女の性差を強調し、LGBTの子どもへの配慮がありません。
5年「男子と女子が協力し合って」では「男子には男子のよさが、女子には女子のよさがあります」と書かれており、男女の性差を強調しています。今日では「性」は単純に「男女」に分けられないというのが社会的常識になっており、学校教育では特に配慮が必要です。この教材は子どもたちに誤った認識を与え、LGBTの子どもを傷つける可能性があります。
また1年生では座る姿勢を教える写真がありますが、男女の手の置き方が違っており、性差を強調しているのも問題です。

(4)偉人伝が多く、「偉人」の負の側面には全く触れていません。
 <教育出版>は他社にくらべ群を抜いて「偉人」伝が多く、6年生では年間の授業の半分以上が「偉人」の学習になっています。しかし、実在の人物には多面性があり、歴史的・社会的な批判も数多く、現在生きている人物にはこれから何があるかわかりません。子どもたちに道徳的なロールモデル(めざすべき人物像)として特定の人物を示し、「道徳性」を養おうとするのは無理があります。
 例えば、<教育出版>は3年と6年で2回も西郷隆盛を取り上げていますが、西郷隆盛は「征韓論」を主張し、後の日本の侵略戦争・朝鮮植民地支配に大きな影響を与えました。このような歴史上の人物は歴史学習の中でその人物が歴史的に果たした役割を学ぶべきであり、道徳教科書で扱うのは不適切です。

2.その他の道徳教科書の問題点

(1)他社の偉人伝にも問題があります。
<光文書院>6年「誠実な人―吉田松陰」)は、吉田松陰を正直な人物として取り上げ、明治の日本をけん引した弟子を育てた人物として、子どもたちがお手本にするように示しています。しかし吉田松陰は獄中で書いた『幽囚録』で、朝鮮半島は勿論のこと、カムチャッカからフィリピンまで広くアジア地域を植民地にすべきと主張した人物であり、弟子たちは師の教えに忠実に日清・日露戦争を進めました。西郷隆盛同様、彼らが歴史上果たした役割にはまったく触れず、道徳教科書で「人格的すばらしさ」ばかりを強調するのは不適切です。
<学研教育みらい>6年「どれい解放の父リンカン」は、南北戦争時のアメリカ大統領リンカーンを取り上げ、「自由・平等」のために黒人を奴隷から解放したことが強調されています。しかし、リンカーンは黒人に対しては非常に差別的だったとか、奴隷解放は当時の北部が黒人を白人よりも低賃金で雇えるようにするために行ったものであり、リンカーンは自らを「奴隷解放論者ではない」と強調していたとか、多くの文献が示しています。リンカーンが奴隷制度をやめさせたことは歴史的にも高く評価すべきことですが、リンカーンの人格からもっぱら子どもたちに説明するのは無理があります。

(2)「星野君の二塁打」は極めて不適切な教材です。
昨年、「日大アメリカンフットボール事件」との関連で話題になった「星野君の二塁打」が、<東京書籍>6年、<学校図書>6年、<廣済堂あかつき>6年の3社に掲載されています。監督の指示に従わなかった選手に「出場停止」の罰が与えられるという教材ですが、「規則・ルール」には無条件に従わなければならない、違反すれば厳罰が待っていると脅すのは、子どもたちから考える力や自主性を奪いかねません。

3.社会科教科書について

<東京書籍>社会科教科書には多くの問題点があります。
<東京書籍>は6年「新聞を読もう」というコラムで、「改憲議論を呼びかける安倍首相」の写真入り記事や、最高裁が一票の格差をめぐる裁判で「合憲」とした判決の記事を載せています。教科書は時の政権や政党の宣伝パンフレットではありません。国民の世論がわかれている問題で、たとえ新聞記事であっても政権寄りの論調だけを掲載するのは不適切です。公平・公正が求められるのが教科書です。
<東京書籍>6年の「平和主義」のページには日本国憲法9条に関する記述がなく、「自衛隊が日本の平和と安全を守っている」と強調されています。9条は日本国憲法の前文とともに「平和主義」の内容を定義した重要な条項であり、「憲法改正」も主要には9条をめぐって論争が起きているにもかかわらず、9条を教えない教科書は不適切です。

これらは教科書の問題点のごく一部です。教職員の意見、市民の意見なども参考にして、厳密に教科書を検討し、「人権・平和・共生」という人類普遍の原則を大切にしている教科書を採択してください。

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